ESCOの起源は100年以上前のフランスにさかのぼるといわれているが、実際にビジネスモデルとして確立したのは米国である。米国では第一次石油危機以降、原油価格の高騰を受け、ESCO事業が生まれ、普及拡大した。この間、DSM(Demand Side Management)の促進や公益企業の規制緩和、連邦政府へのESCO導入等、様々な歴史が刻まれている。
1990年代に入ると、米国で発達したESCOのモデルは欧州でも導入されるようになるとともに、途上国への導入支援が行われるようになった。時期を同じくして、我が国では、1996年に通商産業省(現在の経済産業省)資源エネルギー庁にESCO検討委員会が設置され、ESCO事業導入に関する検討が開始された。以降、導入可能性調査、実証プロジェクト、計測・検証手法の検討等を経て、1999年に民間によるESCO普及促進主体として協議会が設立され、以降、政府との協調関係を密にとりつつ民間事業者・団体とともにESCO事業の普及促進活動を行ってきた。
1996年に資源エネルギー庁に「ESCO検討委員会」が設置され、我が国へのESCO導入のための検討が開始された。この中で、ESCOとは何か、我が国に導入する場合の課題と対応策等が検討され、以降の政策支援の方向性を示すものとなった。同時に、総合エネルギー調査会基本政策小委員会中間報告書(1996年12月)では、省エネルギー推進のために「ESCOの創設等の方策について検討する」と明記され、省エネルギー政策のプログラムの一つとしてESCO事業が位置づけられている。
(財)省エネルギーセンターが208企業・団体、233名からなる研究会を組織し、ESCOの全般的な検討が行われた。この中で、我が国の潜在ESCO市場は原油換算404万kl/年、投資規模2兆4,715億円と試算されている。この他、業務施設、産業施設での事業化可能性調査、標準契約書、計測・検証の検討が行われている。
(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「平成10年度高効率エネルギー利用型建築物改修モデル事業」の補助を受け、4件のESCO事業が行われた。この事業の省エネルギー性、経済性、計測・検証手法を評価すると同時に、標準契約書が作成されている。
標準契約書は米国でもESCO導入当初に開発されており、ESCO事業の普及期に多くの国で検討されている。この時点でのESCO事業の契約書は、一般の建設工事契約書に省エネルギー保証契約を追加した程度であり、様々な変動要因に対応するには不十分な契約内容であったと思われる。ここで開発した標準契約書は、事業主とESCO事業者のリスクを洗い出し、各々への対応方法を条文化することで、想定される紛争を事前に回避することを目的に開発されている。ESCO事業では、長期間にわたる省エネルギー保証を提供するために、このような合意を締結することが必要であるが、我が国の商習慣では事業者がこのような詳細な契約に不慣れなこともあり、十分に活用されているかは確認できていない。一方で、公共施設では、検討段階で様々な変動に対応するための条件整備が求められる。ここで開発された標準契約書は、公共施設でのESCO事業調達を行う際の契約書に反映されることになる。
計測・検証の研究は米国を中心に進められてきた。これを取り纏めたものが、IPMVP: International Performance Measurement & Verification Protocolである。IPMVPは計測・検証の基本的な枠組みと、その技術内容を示したものであるが、我が国に適用する場合には、ビルのエネルギー消費及びその変動要因等を再確認し、我が国の条件に適合したガイドラインを開発する必要がある。これらを検討することを目的に1999年から業務施設を中心に3年にわたりエネルギー消費の計測調査を行い、計測・検証手法のガイドラインを開発した。
民間のESCO推進母体としてESCO推進協議会(会長:茅陽一、東京大学名誉教授)が設立された。設立当初は16の団体・個人が参加し、2007年4月現在の会員数は131になっている。国内での普及啓発活動を行うとともに、2005年からはアジアでの普及啓発活動にも力を入れている。
協議会が行ってきた活動の概要を以下に示す。